ダボスでギャビン・ウッドが話したこと①『非中央集権とは?』
これは2022年ダボス会議期間中のインタビュー動画です。
※旧ブログ Hon Nyakuで2022年7月に翻訳したものをこちらに移動しました。
ここでGavin Wood博士は、Web3のキーワード『分散化』『非中央集権』について詳しく話しています。
もともと「Web3.0」というのは、Gavin博士が初めて定義した言葉なんですよね… 。 (Gavin博士のブログ Dapps: What Web 3.0 Looks Like)
Alex(インタビュアー):今週はWeb3 Foundation(Web3ファンデーション)とUnfinishedのコラボで、ダボスからお送りします。
今日のゲストは、イーサリアムの共同創設者であり、ポルカドットの創設者であるギャビン・ウッドです。
この番組でWeb3について話したことは何度かありますが、これほど深く掘り下げた話はありません。ギャビンようこそ!
Gavin:お招きいただきありがとうございます。
Alex:あなたはイーサリアムの共同創設者であり ポルカドットの創設者でもあります。
今あるクリプト(ブロックチェーン、暗号資産)のプロジェクトの中で最も影響力のあるものです。
どちらも現在の制度に挑戦しています。
あなたについて2つの逸話を耳にしました。
1つめは、今あなたがやっていることは、エドワード・スノーデンの告発に影響を受けたというもの。
もう1つは、2009年の金融崩壊を見た後、決心をしたというものです。
Gavin:2013年頃だったと思います。
スノーデンの告発は、当時かなりタイムリーでした。
確かに私は2014年に書いたWeb3の小さな文書のようなもので このことに触れましたが 、2008年の金融危機もまさにその決心をするきっかけになった出来事です。
そして私は世界で起こっていることの多くが 、日常生活の継続に不可欠でありながら隠されていて不透明であり、必ずしも最善であるとは言えないことを意識するようになりました。
Alex:このような形でスタートするのは素晴らしいことです。
というのも、Web 3に興味を持つ人だったり、壊れたシステムを直したいという願望をよく耳にしますが、私たちは壊れたシステムについてあまり多くを語りません。
特にスノーデンの告発はどうですか?
今のシステムは壊れている、新しいものを作る必要があると考えさせられましたか?
Gavin:私たちは、自由な社会で暮らす市民として、ある程度の期待を持って生活しています。そしてその期待とは、特定の物事が特定の方法で機能する事を期待することです。
政府職員が、少なくとも正当な理由がない限りは、勝手に私のビデオ通話を盗み見ることはできないというような、ある程度のプライバシーを期待します。
そして私たちの裁判官は、できれば全く偏見の無い公平な裁判官であってほしいですよね?
それがこの社会で、どの程度守れていないかが明らかになった時に、新しいものを作る必要があると考えさせられました。
また社会契約が、特にセキュリティ・サービスや政府側で忠実に守られていないことが明らかになった時にです。
政府職員には、社会契約のようなものを守ることに熱心な、素晴らしいまっとうな人もたくさんいることは間違いありません。
しかし、スノーデンの告発は、セキュリティ・サービスの多くは、彼らが司法の監視をほとんど必要としない権力であり、チェックもされていないことを裏付けていると思うのです。
これは不幸な事です。
この社会には一見、法令があり、倫理があり、 倫理を理解し、自由を守り、警戒してきた豊かな歴史があるにもかかわらず、カーテンの向こう側ではすべてがそのような見かけ通りではないのです。
Alex:だから、私が知りたいことの一つは、なぜ先に進んで全くゼロから新しいものを作ろうとするのか、ということです。
なぜ新しいウェブを作ろうとするのですか?
なぜ技術的な困難があるような、新しいウェブを作ろうとするのか。
Gavin:その当時から今日に至るまでまず第一に、私は技術者であり、政治家ではありません。システムを改革する試みが、政治の世界で始まることを恐れています。
それは不透明な世界です。
第二に私は実際、テクノロジーの大部分が必ずしも問題を作ったとは言いませんが、この広範で包括的な通信技術のインターネットの利用が、この問題を促進しました。
私は、テクノロジーがそれを少しでも良い方向に向かわせるための手段であるという希望を持っています。
Alex:今お話に出た通信技術の問題ですが、コミュニケーション・テクノロジー(通信技術)について、もう少し詳しく教えてください。
Gavin:私はそれが問題だとは言いませんが、それが問題を助長したとは言えると思います。
権力者がその権力を強化しようとするのは自然な傾向であり、インターネットはかつてない規模で権力を強化するための実に効果的な手段を提供したのです。
権力の強化から逃れるためには、それに対する革命的な解毒剤が必要なのです。
Alex:権力とは、フェイスブックやグーグルのことを言っているのでは?
Gavin:それらも一つの要素です。
Alex:このような大企業の権力の維持に対抗する解毒剤が、非中央集権、分散化だと。
Gavin:分散化は目的達成のための手段ですが、非常に強力な手段です。
Alex:分散化(非中央集権)とは何なのでしょうか?
Gavin:それぞれの異なるグループの人々にとって、それぞれ異なる意味があると思います。
私が今日最も重要だと思う意味は、ある人は政治的分散と呼びますが、それは本質的に、個々の経済主体が持つシステムのパワーの量を減らすことなのです。
私たちの政治システムのほとんどは、それが軍事政権であれ、民主主義であれ、あるいは企業であれ、比較的階層的な権力構造を持っています。
組織レベルの意思決定能力を持つトップが一人か数人であることが多いのです。
そしてある程度、各組織に委譲される。
そのため自然に中央集権化され、その後、各階層で委譲が進み、最下層に行くほど委譲の度合いが大きくなります。
一番下のレベルでは、意思決定能力が非常に低くなります。
もちろんもっと斬新な組織構造も提案され、少なくとも実行に移されようとしています。非常にトップダウンの権力構造である。
非中央集権はそのような権力構造を少なくとも構造的に排除することです。
分散化されたシステムが、資本主義経済と同じように、この権力構造の小さなバージョンを持ち得ないというわけではありません。
資本主義経済のように上司がいて従業員がいるような会社であるのは問題ではありませんが、だからといって命令主導型経済ではなく、概念的に公正なルールの下に存在する構成要素があるということです。
他の企業と競争し、サービスを提供し、商品を販売する。
そしてそれこそが、私たちの政治的分権の定義です。
つまり、政治的な分権化とは、すべての意思決定の卵を一つのカゴに入れないこと、少なくとも構造的にそうしないことを意味します。
Alex:今おっしゃったような権力構造のトップの人たちが集まっているダボスに、あなたがいるのは変な感じですか?なぜ今あなたはダボスにいるのですか?
(②へ続く)